2023-04-02
残された家族に迷惑をかけないためには、自宅(不動産)を処分しておいた方がいいか?または、自宅(不動産)を相続させる場合はどのような準備をしておけばいいのか?
終活を始めてみると、遺産の中の不動産について、色々な疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
この章では、終活において不動産について考える重要性、不動産の終活方法、終活で不動産を売却するメリット、終活で不動産を売却する際の注意点、不動産を相続させる場合の準備と注意点、不動産相続の相談先などについて分かりやすく解説致します。
1.終活を始める中での不動産について考える訳
我が国の家計資産における不動産が占める割合は、諸外国に比べて高い傾向にあります。事実、預貯金・証券などの金融資産はないけれど、先祖代々引き継いできた土地や持ち家やの不動産資産は持っているご家庭は少なくないと思われます。
終活の活動として不動産についても考えることがなぜ大切なのかを解説致します。
1)相続人の間でのトラブルが起こりやすい
不動産は売却すれば、現金という金融資産になります。現金であれば、老後資金として生前に利用することも可能です。相続の際も分配しやすくなります。
しかし、売却しない場合は、以下の2つの理由からトラブルになりやすいといわれています。
それぞれについて解説します。
相続の時には相続税が発生します。金融資産の場合は現金で相続税を賄うことができますが、不動産の場合は現金化(売却)に時間がかかるため、相続人は相続税を自己資金から支払わなければいけない可能性があります。
複数の相続人が存在する場合、遺産を分配しなければならなくあります。不動産は単純に分割することが難しく、トラブルに発展しやすいです。
被相続人の子ども3人が相続人である場合、等価の不動産が3つあれば公平に分配できますが、ほとんどの場合は公平な分割ができなく、相続人同士が揉めることがあり、相続争いに発展するケースも珍しくはありません。
2)不動産を相続した人の負担になる
相続人が話し合い、全員が納得できる相続が行えたとしても、不動産を相続した相続人は、住む・貸す・売るという選択肢から選択することになります。しかし、いずれを選択した場合でも費用が掛かるため、相続人の負担になることが多々あります。
また、相続人が相続した不動産を空き家のままにした場合、下記のようなリスクが発生します。
相続人の間のトラブルや、空き家として放置された場合のリスクを回避するためにも、終活で不動産について対策を行うことは大切です。
2.不動産終活の解説をいたします。
不動産終活方法として、次の3つの方法があると考えられます。
それぞれの詳細について解説します。
1)売却して現金化
不動産は売却してしまえば、現金という金融資産になります。また、現金であれば、老後資金として生前に利用することでもできますし、相続の際も分配しやすくトラブルを避けることもできます。
2)遺言書の作成
不動産を相続させる場合は、遺言書を作成することにより、相続時のトラブルを防ぐことができる可能性があります。ただし、あまりにも偏った内容である場合、金融資産が少ないために相続税が相続人の負担になる場合は、対策を考える必要があります。
3)生前贈与する
「不動産も生前贈与すれば節税になるのでは?」と考える方も多くいらっしゃると思われます。しかし、不動産については相続より税負担は高くなる可能性があります。
不動産を生前贈与した場合、不動産取得税と登録免許税が発生しますが、相続の際は原則、不動産取得税については非課税となります。登録免許税についても、贈与(2%)より相続の場合(0.4%)の方が低いのです。また、同居していた家族が住居を相続する際には、課税額を80%減額するという小規模宅地等の特例制度もありますが、これも生前贈与では利用できません。
上記の点から、不動産の生前贈与はおすすめできません。特定の家族に不動産を譲渡したい場合は遺言書を作成することがよいでしょう。また、生前に不動産の管理を任せたいような場合は、所有権はそのまま残し、家族信託を利用することで管理権のみ委任することてもよいでしょう。
3.不動産を終活で売却メリット
残された家族がトラブルにならないようにためにも、終活の活動として不動産売却しようと考える方もいらっしゃると思われます。不動産売却することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
1)資金調達ができる
不動産を売却して現金化することは、急な出費があった時のための資金としてプールしておくことができます。また、投資に回して運用益を得ることも可能。他にも、お墓の購入や老人ホームへの入居資金にするなど、他の終活に役立てることができます。
お金が必要になった時に不動産を売却しようとすると、不動産価格を下げて売らなければいけなくなる、不動産屋に足元を見られてさらに安く買いたたかれてしまう等のリスクがあります。終活で不動産を売却する場合、特に急ぐ必要がないため、条件をじっくり比較する余裕があり、より有利に売却できる可能性があるでしょう。
2)相続のトラブルを防ぐ
不動産は単純分割できませんが、現金なら分けることができます。また、相続税の支払いについての心配もありません。そのため、相続のトラブルになりにくいでしょう。
また、不動産は生前贈与するメリットが低いですが、現金であれば非課税枠で贈与することもできます。
4.終活で不動産売却する時の注意点
終活の活動として不動産を売却する際は、どのような点に注意が必要なのでしょうか。特に注意すべき点について解説します。
1)住まいの確保をする必要がある
現在居住している不動産を売却する場合は、当然ですが別に住む場所を確保する必要があります。
この機会に介護付き有料老人ホームなどに移るのなら問題ないですが、賃貸に移ることを考えている場合は注意が必要です。夫婦で住む場合は特に問題はないと思われるかもしれませんが、片方の配偶者が亡くなった後、高齢者の一人暮らしは孤独死リスクなどから大家さんに嫌厭される傾向があるため、住む場所が見つからないという事態になりかねません。
今住んでいる住居に住み続けた状態で売却するリースバックという方法も終活には適しているといわれています。これは、居住している不動産を不動産会社へ売却し、そこから賃貸という形で現在の家に住み続けるというシステムです。
リースバックには、資産の調達と生きている間の住居の確保の両方が実現できるというメリットがある一方で、売却益が通常の売却より60~80%程度低い、家賃が高い等のデメリットもあるので、慎重に検討する必要があります。
2)不動産価格は流動的
その他に、不動産を処分する際に注意が必要なこととしては、不動産の価格は流動的であるということが挙げられます。
特に今はコロナ禍で、不動産価格は下落傾向にあるといわれています。2~3年程待って景気が回復してからの方が、良い条件で不動産を売却できる可能性は高いです。ただし、予測不可能な事態が起こり、今よりさらに下がる可能性もあります。
将来のことを正確に予測することはできませんが、それだけに不動産の価格は変動が激しく、売却のタイミングは難しいということがいえます。
5.不動産を相続させる場合の準備と注意点
不動産売却ではなく、家族に相続させたいという方もいらっしゃるでしょう。不動産を相続させる場合の準備や注意点について解説します。
1)遺言書を作成
不動産を相続させたい場合は、遺言書を作成することをおすすめします。「遺産といっても相続税もかからないような自宅しかないのだから、遺言なんてなくても大丈夫!」と考えている方もいらっしゃると思いますが、複数の相続人がいる場合、争いが起きないとは限りません。
遺言書を作成し残しても、相続人同士の争いを回避できない場合もありますが、相続人の意思を明確に示しておくことはよいことと思います。
2)税金対策を行っておく
不動産を相続させたい場合、相続人に負担をかけないためには、不動産の相続税をあらかじめ試算し、同程度の金融資産を同時に相続できるように手配しておくが大事です。
しかし、金融資産はほとんどない、または不動産を長男(同居)に相続させる代わりに他の兄弟に金融資産を残したいというような場合は、どうすればよいのでしょうか。
このような場合は、生命保険を活用することがよいでしょう。不動産相続時にかかる相続税相当の保険金を、相続人を受取人としてかけておくという方法になります。そうすることで、保険金から相続税を支払うことができます。
3)相続人全員と話し合いを持つ
前述した通り、不動産は公平に分割することが難しい資産となります。そのため、相続させたいと考えている場合は、生前に相続人全員と話し合いを持つことをおすすめします。その際は、相続人だけでなく相続人の配偶者も同席させること好ましいです。話し合いの場で相続人本人が納得しても、自宅に帰って配偶者と話し合ったことによって意見が変わるということはよくある話です。
6.不動産相続に関する相談はどこへ
不動産の相続については、一般的には知られていない複雑なルールがたくさんあります。思い込みなどによるトラブルを防ぐためにも、不動産の相続を考えている場合は、あらかじめ相続問題に詳しい専門家に相談しておくことをおすすめします。また、遺言書を作成する場合も、法的な問題点や有効性を確認するためにも、専門家に相談することが望ましいでしょう。
今回の章では、終活で不動産について考える必要性、不動産終活方法、終活で不動産を売却するメリットや、終活で不動産を売却する際の注意点など、不動産を相続させる場合の準備と注意点、不動産相続の相談先などについて解説しました。
不動産は相続の際、トラブルにつながりやすい資産です。「うちは家くらいしか資産がないから相続でもめることなんてないだろう」と思われる方も多くいらっしゃると思いますが、家しかないからこそ相続人同士が揉めることもあるのです。
大切な家族が自分の死をきっかけに争うことがないように、終活の活動として不動産資産についてしっかり検討し、必要な対策を講じておくことをおすすめします。
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